Dr.みやちの人生に効く処方箋 (15) ワインを飲んだ若き日々と健康について
外科医になりたての頃、朝早くから病棟に顔を出し、手術を終え、患者さんの状態が落ち着くとすっかり外は真っ暗になっている毎日でした。
そんな忙しくも学びの多い日々を過ごしていたある日、外科医の先輩が頑張っているからとワインをご馳走してくれました。
その豊かな香り、複雑な味わい、長く続く余韻に一気にそのワインに魅了されたことを思い出します。
その当時は、少量の飲酒は、健康にも良いと考えられていました。
しかし今では、飲酒そのものが量に関わらず健康に良いとは言えないという報告もあります*。
では、ワインをはじめ飲酒はしない方が良いのでしょうか?
一方で、過度の飲酒よりも孤独の方が、ずっと健康に悪いという報告もあります。
人は病気にならないために生きているわけではありません。
若かりし外科医だった頃、ワインを理由にいろんな方々とご縁をいただきました。
飲酒することで家族や友人と繋がりができ生活が豊かになるのであれば、自分の体と相談しつつ適量のお酒を嗜むのも選択肢かもしれません。
Dr.みやちの人生に効く処方箋 (14) おでんとDX
私の父は静岡市出身で、黒はんぺんが大好きなのであろう。
東京から京都に戻る新幹線は、わざわざひかりに乗車し、静岡駅に停車するわずかな間にKIOSKで黒はんぺんを購入し再び新幹線に飛び乗るほどである。
そんな父の大好きな黒はんぺんは、大阪出身の母の作る透き通っただし汁のおでんには認められず、いつも家族でおでんを食べる際には別鍋で提供されたものだ。
それ以降も、おでんのみならず鍋料理を囲んで家族や友人、時には初対面の方々ともよく親睦を深めた。
コロナ禍においては、そのような親睦を深める機会が減ってしまうばかりではなく、「つながり」を失うことで高齢の方々は、筋力や認知機能が低下してしまうのは悲しい事実である。
今年4月に掛川市で新設されたDX推進室は、データやテクノロジーを活用し、地域課題の解決や新しい価値を創造するDX(デジタル・トランスフォーメーション)の普及を加速させる目的で活動を開始した。
コロナ禍でも地域住民が安心して自分らしく暮らすことができることは、重要な地域課題であり、ヘルスケア領域でも行政、医療機関、民間企業が垣根を越えて協同し新たな挑戦をしている。
コロナ禍で失った自由におでんを囲むような「つながり」を再び取り戻すことは、私の果たすべき責務であると考えている。
ぜひ、掛川市の皆さんと一緒にその責務を果たしていきたい。
Dr.みやちの人生に効く処方箋 (13) 歳をとってからの方がタンパク質は必要!?
歳をとるにつれて肉や魚よりも、もっとあっさりしたものを食べたくなる人も多いと思います。
若いうちは、体が大きくなり、新陳代謝が盛んなためタンパク質をしっかり取るべきだけど、歳をとればタンパク質はそれほど摂取しなくても良いと思っていないでしょうか?
しかし実は、高齢者の方は健康寿命を延ばすためにしっかりタンパク質をとる必要があると言われています。
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2020年版)」では、高齢者のフレイル(虚弱)予防の観点から、十分の量のタンパク質を毎日摂ることが推奨されており、体重あたりでは若い人よりも多くのタンパク質を摂取することが望ましいとしています。
65歳以上で目安は1日60g!
良質なたんぱく質は、一般的に肉、魚、卵、大豆、乳類に多く含まれます。
歯が悪い人や飲み込む力の弱い人は、ひき肉を使う、材料を軟らかく煮る、飲み込みやすくとろみをつけるなどの工夫をするとよいでしょう。
歳をとってもしっかりタンパク質を摂取して、いきいき過ごせるからだ作りをぜひ今から心がけましょう。
※ただし腎臓に疾患のある人は、タンパク質をたくさん食べると、腎臓に負担がかかってしまい、腎臓の機能を悪化させてしまう危険がありますので注意が必要です。
Dr.みやちの人生に効く処方箋 (12) お年寄りにもやさしい食品備蓄のポイント
近年、地震や台風などによる大災害が全国各地で発生しており、今後も非常事態への対策、備えがとても大切になります。
過去の大規模災害において、様々な理由で通常の食事を食べられないお年寄りが、一般の支援食料を食べることが出来ずに体力が低下したり、食料の入手に苦労したことが報告されています。
日頃からやわらか食やむせにくい食事を食べている方は、普段の買い置きを少し多めに用意し、いざというときにも日常生活に近い食事を提供できるような準備が必要です。
飲み込む力が落ちてしまったお年寄りには、レトルトのお粥、ゼリータイプやムースタイプの栄養食品が推奨されます。常温保存ができ、1回で食べきれるものもあるので便利です。
またレトルト食品であれば移し替える容器が不要なスタンディングパウチやスパウト付きパウチであればすぐに食べることができ、介護負担も軽くなるため良いと思います。
備蓄量は最低でも3日分と言われていますので、ぜひこのような食品を普段の食事に取り入れ災害時に備えてみてはいかがでしょうか?
Dr.みやちの人生に効く処方箋 (11) 夏に食べたい美食3皿
おいしい食事は、人生の楽しみの一つです。
今回は、僕が海外で出会った「夏に食べたい美食3皿」を紹介したいと思います。
【1】ポキ丼(ハワイ)
ハワイの伝統料理です。マグロやアボカドを角切りにして、ピリ辛醤油タレに漬けこんだレシピは、日本人の舌にもとてもよく合います。ごま油の香りが、暑い夏の日にも食欲をそそります。
【2】ムサカ(ギリシャ)
ギリシャの家庭料理の代表格で、ナスとじゃがいも、ミートソースにたっぷりのホワイトソースを重ね焼きにしたラザニアのような料理です。子どもにも大人気の料理で、焼きたての香りに釣られて家族みんなが食卓に集まります。
【3】プーパッポンカリー(タイ)
「プー」がカニ、「パッ」が炒める、「ポンカリー」がカレー粉を意味します。カニやソフトシェルクラブを甘辛味噌油で味つけし、卵を混ぜ合わせ炒めた料理です。たくさん汗をかいた後の濃厚な一口は病みつきになり、白いご飯とも相性抜群です。
ぜひおいしい料理で暑い夏を乗り越えてくださいね。
Dr.みやちの人生に効く処方箋 (10) お父さん、外の付き合いは長生きの素?
年配のお父さん世代にお話をさせていただき大きな反響を頂いたことがあります。
今回は父の日ということもあり、ちょっとお父さんの味方の話をしたいと思います。
反響を頂いたテーマは、「寿命に影響を与える要因」です。
みなさん、長生きの秘訣と聞いてどんなことを思い浮かべるでしょうか?
色々あるでしょうが、下の表に示すように「つながりがある」が一番寿命に影響するという研究結果があります。
※図参照
つながりとは、家族や社会との関係です。コロナ禍で、特に現役を引退したお父さんの引きこもりや筋力低下が問題となっています。
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推奨される社会とのつながり目標は、
・1日1回以上は外出を
・週1回以上は友人・知人と交流を
・月1回以上は活動やイベントに参加 です。
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また出かけるの!?といつも言われているお父さん。
そのお付き合いがもしかしたら健康的な人生につながっているのかもしれませんので、感染に留意しながらちょっと大目に見てあげてくださいね。
Dr.みやちの人生に効く処方箋 (9) 新型コロナワクチンに備えよう
掛川市でも75歳以上の方を対象に新型コロナワクチン接種が開始されます。
ワクチン接種は筋肉注射で、3週間あけて2回接種することで、発症予防や重症化予防効果が期待されます。ただし接種後も感染対策は、今までと同様に継続する必要があります。
気になるのがワクチン接種後に起こる副反応です。
主な副反応として多い順に
① 接種時の痛み
② だるさ
③ 頭痛
④ 筋肉痛
などが挙げられます。
接種した1~2日後に出現することがありますが、ほとんどが3日以内に回復します。
特に2回目接種後は発熱を含めた副反応が起きやすいので、接種当日と翌日は可能なら予定を空けておきましょう。
また接種後3日以上経っても解熱しない場合や症状が非常に重い場合は、医療機関に相談しましょう。
なおワクチン接種後当日に入浴は問題ありませんが、激しい運動や過度のアルコール摂取は控え、さっぱり食べやすい食事を用意すると良いのではないでしょうか?
ワクチンについて正しく知り、冷静な対応を心がけましょう。
参照 長野県ホームページ
https://www.pref.nagano.lg.jp/kansensho-taisaku/vaccine.html
Dr.みやちの人生に効く処方箋 (8) 認知症でも自分らしく過ごせる街へ(1)
1970年に310人だった100歳以上の人口は、2020年にはなんと80450人となりました。掛川市だけでも約60名もいらっしゃいます。
加齢と切り離すことができないのが認知症です。
認知症は、「脳の病気や障害など様々な原因により、認知機能が低下し、日常生活全般に支障が出てくる状態」です。
2020年には全国で600万人が認知症とされ、2025年には65歳以上の5人に1人が認知症になると予測されます。(図参照)
認知症は誰でもなりうることから、認知症への理解を深め、認知症になっても希望を持って日常生活を過ごせる社会を創っていくことが重要となります。
静岡県民には嬉しいことに、緑茶に含まれるカテキンは、認知症の大部分を占めるアルツハイマー型認知症の原因と考えられているアミロイドβたんぱくやタウたんぱくの凝集を抑制し、その毒性を弱めることが報告されています。
このコラムでも認知症について触れていきたいと思いますので、緑茶を飲みながら読んでもらえると嬉しいです。
Dr.みやちの人生に効く処方箋 (7) 「平均寿命」と「健康寿命」
日本は世界有数の長寿国ですが、「平均寿命」と元気で過ごすことができる期間である「健康寿命」との間には差があるのをご存知でしょうか??
この差の間は、病気や障害など日常生活に何らかの制限を抱えながら生活することになります。
Q 「平均寿命」と「健康寿命」の差はおおよそ何年でしょうか?
A:3年 B:5年 C:10年
答えは、C:10年になります。
(←)左図参照
つまり、平均すると10年程は介護や入院などの医療サービスを受けながら人生の最後を過ごすことになります。
人生100年時代を生きていく上で、この健康寿命を延ばし平均寿命との差を縮めていくことが大切になるわけです。
食事は、この健康寿命延伸にとって重要な役割を担います。
では食事のどんなことに気をつければ良いのでしょうか?
国が発表する食生活指針の最初に挙げられているのが「食事を楽しみましょう」です。
四季のある日本では、旬の食材を楽しむことができます。少し苦味のある春野菜には、体の老廃物を排出しデトックス効果があるものもあります。
しっかり灰汁抜きをして、春の食材を楽しんでみてはいかがでしょうか?
Dr.みやちの人生に効く処方箋 (6) おなかの同居人『腸内細菌』と仲良く健康に
■おなかの同居人『腸内細菌』と仲良く健康に
ヒトの腸管には約1000種類、100兆個にも及ぶ腸内細菌が生息しており、重さにして約1kg~2kgと言われています。
ヒトの細胞が約60兆個ですので、自分の細胞よりもはるかに多い細菌がいることになります。このことから腸内細菌を1つの臓器とする考え方が広まりつつあり、自分の体だけでは賄えない機能を腸内細菌に託しているというのです。
腸内細菌の良いはたらきとして
・免疫力をあげる
・ビタミンの産生
・血圧やコレステロールを下げる
などが報告されており、糖尿病や動脈硬化とも関連が示されています。
この腸内細菌を元気にする食事としては、
・ビフィズス菌や乳酸菌を多く含む発酵食品
・食物繊維が豊富な食材
・オリゴ糖を含む食品
が挙げられます。
腸内細菌の状態を知る簡単な方法は、便の観察です。黒ぽく嫌な臭いがしないか、下痢や便秘がひどくないかなど、今年はおなかの同居人である腸内細菌と仲良く健康づくりをしましょう。
●参考文献
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-003.html
https://www.tyojyu.or.jp/net/kenkou-tyoju/kenko-cho/chonai-saikin.html
https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/104/1/104_29/_pdf
https://www.saisanhp.com/files/02%20pdf/300608%20%E9%A3%9F%E4%BA%8B%E3%81%A7%E7%9B%AE%E6%8C%87%E3%81%9B%EF%BC%81%E5%85%83%E6%B0%97%E3%81%AA%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%A0.pdf